作業療法士 菅原洋平『脳のトリセツ』
- 脳は特別な存在ではない、ただの臓器の一つである。
- しかし、他の臓器とは大きく異なる特徴を持つ。
- 以上を踏まえて客観的に管理していくことで、日々の生活や仕事でもっと成果を出していける。
という立場で書かれた本です。
自分の力を最大限に発揮する! 脳のトリセツ (DO BOOKS)
- 作者: 菅原洋平
- 出版社/メーカー: 同文舘出版
- 発売日: 2014/09/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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作業療法士の方が、専門の教育や治療の現場で身に着けたことを、分かり易くまとめています。
ちょっと論理的に言葉足らずというか、不親切な書き方・まとめ方があり、読んでいて引っかかる箇所も多いと思います。
ですがそれ以上に、経験に培われた知識と知恵が、一般の人でもとっつき易い表現と読み易いレイアウトでまとめられているメリットが大きく、お勧めです。
読者はこの本で、体系的な知識を得るのではなく、幾つかの実践アイデアと共にふんわりとした理解を得るのでしょう。
具体的には、次のような内容です。
要点1:脳の無駄遣いをやめよう
脳は今あるエネルギーをあるだけ使ってしまう。
ここぞという時に備えるために、不要な時に脳の無駄遣いをしないようにする工夫が必要。
- 感情の無駄遣い……言葉の使い方で対処する
- 生理現象の無駄遣い……自律神経を調整する行動で対処する
- 集中力の無駄遣い……情報量の調整や、脳のモード切替行動、行動のパターン化で対処する
要点2:脳が最もパフォーマンスを発揮できるのは、ハーフタスクである
「ハーフタスク」とは、50%は経験済みだけど、残り50%はやってみなければ分からない状態のこと。
この状態で、脳は最もストレスを感じず、また力を発揮でき、私達はわくわくできる。
上手くハーフタスクを作ってものごとを進めることが、能力発揮・向上のポイント。
要点3:脳のタイプを知ることで、他の人と上手くやろう
人の思考形式には、ボトムアップ型とトップダウン型がある。
それぞれ特徴があり、人付き合いで上手くやる方法や、能力アップのためのコツがある。
所感
本全体のキーワードとして扱われているのは、「ハーフタスク」です。
物事を上手く進めるにはハーフタスクを作ることが肝要、と何度も説いてあります。
また、個人的に最も興味深く、印象に残ったのは、
- 集中力の無駄遣い……情報量の調整や、脳のモード切替行動、行動のパターン化で対処する
の部分ですね。
特に、脳には二つのモードがある、の下りは、
「そうそう、やっぱりそうだよね、医学的にもそうなんだね」
と納得の声を上げたかったです。
- 何かに集中しているとき、注意を向けるときに使われる注意関連神経回路
- ぼーっとしているとき、脳内の情報処理をしているときに使われるデフォルト・モード神経回路
この二つがあることを認識し、上手く切り替えることで、その場その場に合った適切な行動ができるそうです。
この辺りを更に突っ込むと、当サイトのメインテーマの一つである「自分の内面世界に没頭することで天然になる問題の解決」の鍵にできるように思います。
いずれ文章としてまとめてみたいです。
本の構造や文章は、練れていないと感じる部分がところどころあり、読んでいてちょっと引っかかります。
例えば、ある章で、
「悩み事象Aについては、行動Xで対処するのがいい」
と説明があったのに、次の章では、
「行動Xには向く人と向かない人がいる。
aタイプの人にはXが向くが、bタイプの人にはYが向く」
という説明がある、といった調子に。
本全体の内容を自分の中でフォローしながら読めば読めるけれど、もうちょっと、章立てや文章を上手くまとめる方法もあったんじゃないのかしら。
それでも、この本は、内容の豊かさ、とっつき易さの点から、大変お勧めです。
実は、この本とほぼ同時期に、林修『いつやるか? 今でしょ!』を読んでいたんですよ。
林氏の文章は、非常に明確で、理路整然と分かり易かったので、同時進行で読んでいた菅原氏のものと比べてしまったのもありますね。
林氏は、ストレスなく読めてとても分かり易い、頭の良い文章を書かれています。
これは授業もさぞかし楽しいだろうなあ。
この本も軽く紹介したいですね!
内容がまとまり過ぎてるから、紹介しても短くできそうだけれど(笑)。