白鳥の歌 ~ノロ・ニブ・ドジから巧速を目指す~

マイペース過ぎると評価された元知的ブルーワーカーが、 巧速を目指すトライ&エラーを綴るライフハック集+時々随筆。

ジュリア・キャメロン『The Artist's Way』:日々の生活の潤い不足探しに有効

ジュリア・キャメロン『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』、原題『The Artist's Way』。

一年以上前に読んでいたこれを、今年の春から購入・再読し、創造性回復プログラムを実行していました。
その中身が新鮮で良かったので、ここで紹介します。

ずっとやりたかったことを、やりなさい。

ずっとやりたかったことを、やりなさい。

 

 このプログラムで得られることは、普段見落としてしまうくらいの、自分の好きなことに対する、小さな気付き。

 この本で紹介されているのは、タイトルの如く「Artist's Way」、つまり、絵画や物語、映画や詩や写真や陶芸やダンスなどの創作全般を行いたい人のための、メンタルトレーニングプログラムです。
今正に創作活動に関わっている人だけでなく、「やってみたいし子供の頃は好きだったけれど、今更さらそんな子供っぽいこと出来ないよ」というスタンスから抜け出られない人のためにも書かれた本です。
でも、具体的に、創作テクニック入門編の説明がしてあったり、講師・教室の紹介がある訳ではないんですよ。
本に書いてあるいくつかのトレーニングを、一週間を一区切りとして続けていきます
12週を終える頃には、読者の中のアーティストの魂は十分に癒され、栄養を得て生き生きとし、読者は創作活動にエネルギーを注ぎ込んで日々の生活をより豊かに出来ているでしょう……というものです。

何度かここで書いていますように、私は文学少女がそのまま成人したかのような大人ですから、作詩も物語書きもお絵描きも大好きなのです。しかし、大半の人がそうであるように、今は専ら見る側で、作る側には行っていませんでした。
よって、この本のタイトルにも少し興味を持ち、実践してみました。
そうしたら、創作活動に携わらない場合においても、中々に興味深いアプローチがあることが分かりました。

一番有効な「モーニングページ」は、頭の排水活動である

創造性回復プログラムの中でも、最も重要とされている活動が、モーニングページ。
朝起きて一番にノートに向かい、頭に浮かんでくることをとにかく3ページ書き続ける、というもの。
内容は何でもいいんです。とにかくだらだらと書き連ねていく。
日記のように、一日の終わりに、その日にあったことを反省して翌日に生かそうという方針でもない。
ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニングあったように、頭を絞って問題を掘り下げるということもない。
とにかく思い付くままで良い。

これが、私にはとても良かったんです。
こんなもん別に特に書くことない、って思うでしょう? これが、意外と出てくるんです。
普段だったら考えないようなことを、眠さに任せて書いていると、自分の本音とその解決策が出てくるようになるんですよ。
何でもいい、とにかく書けってスタンスだから、考えることを検閲しなくなる。
「もっと深く考えよう」って脳みそを絞らないから、本当にくだらないことばかり書き出す。
そうすると、真実下らなさそうなことの中に、実は自分の本音が出てくる。
問題だとすら思っていなかった、小さな小さな引っかかりが出てくるようになる。
出てきた引っかかりをどうしようか、って自然とノートに書き出している内に、解決策も出てくる。

例えば私だったら、

  1. 机の上のペン立てがいっぱいになってるけど、どれも捨てたくない⇒新しいペン立てを1つ用意して、どのペンも減らすことなく、全てを使い易いようにディスプレイしよう(これまでの私だったら、「とりあえず捨てる」ことを考える方向に行っていました)
  2. 万年筆が1つダメになりかかってるけど、次はどうしようか⇒せっかくだからスケルトンのを買って、欲しかったエルバンのインク5色セットを買ってみよう(⇒そしてインク沼へ……)
  3. 私は今一つ計算が遅いけど、もうどうしようもないだろうか⇒そう言えば子供の頃、そろばんに物凄く憧れていたのに習わせて貰えなかった⇒よし、近所にそろばん教室があるか探してみよう

等々。
1と2は、普通に自力でも辿り着けたと思うんです。
でも、3のような発想は、モーニングページの自由さが無ければ、辿り着くのに時間がかかったことだと思うんですよね。

引っかかりを片付けると、すごくすっきりしますよ。
「ああ、私はこれがイヤだったんだ!

 これをこう解決したら、すごく快適になった!
 こんな下らないことを我慢してストレスを溜めていたのね……」
って、自分で自分にびっくりします。
どんなに頭を絞って考えても気付けなかったことに気付けて、快適な生活を送れるようになる。
筆者は、これを「頭の排水作業」と説明していましたが、正にその通りです。

普段全く意識しない部分を意識するトレーニングが面白い

他にも、このプログラムは、一週間を一区切りとして、小さな課題をこなしていきます。
用意された質問に答えたり、ものを書いたり集めたりする内に、自分の中に不足しているアーティスト成分……もとい、「創造性を楽しむ性質」を養っていくことが目的なんですね。
これが、非常に面白いんです。
仕事に家庭の作業にと追われている日常生活では、意識しないことを意識できる。
例えば、次のような課題です。

  1. もしあと5回人生を送れるとしたら、それぞれの人生で何をするか。カウボーイ、物理学者、霊能者、僧侶。どんなものが浮かんできても、それを書き出し、更に楽しむために、リストの中から一つ選び、実際にやってみる。例えばカントリー歌手と書いたなら、ギターを抱えて歌ってみる。

  2.  紙に円を描き、円の中に真剣に取り組みたいと思っている課題と、支えてくれそうな人の名前を書き出す。円の外には、少し距離を置きたいと思っている人の名前を入れる。この「安全性の地図」を、何らかの判断を下す時の参考にする。

  3.  人生のパイ作り。円を描き、6つに分ける。それぞれに、霊性、運動、遊び、仕事、友人、恋愛&冒険というラベルを貼る。この6つの領域で、自分がそれだけ満たされているかをグラフにする。(最大の満足は円の縁、中心に向かう程満足度は低くなる。)パイの中で貧困化している領域にちょっと注意を向けて、それを変える努力をしてみる。

  4. 既に亡くなった人物で、会いたかった人を5人リストアップする。次に、あの世で暫く一緒に過ごしたいと思う人を5人挙げる。こういった人達のどんな性質が、自分の友人の中に見出せるかを考える。

……等々。

普段私は、こんなことは全く考えていなかったんですよ。
でも、意外な切り口から、自分の不足している部分を明らかにして貰えるから、そこを補うように活動することで、今まで欠如していた部分が埋められていきます
この、バランス取りが大変新鮮で面白い。

自分一人で何か新しいことをしようとしても、結局、同じようなことの繰り返しになってしまう。
けれどこの本は、新たな切り口を提示してくれて、しかも自分一人ででも、つまり、同志の人が居ない状態ででも、不足を補う行動を無理なく続けていける構造になっている。

毎日がルーチンワークになってしまって、頭が固くなっているなと思う人。
もっと何か潤いが欲しいけど、何を始めたら良いのか分からない人。
頭の柔軟体操をしたい人、、、等々に、是非お勧めしたいです。

ずっとやりたかったことを、やりなさい。

ずっとやりたかったことを、やりなさい。

 

 今回一番活躍した道具

モーニングページはとにかくだらだら書くことが大切ですが、「書いている」ことを意識しないのが一番大変です。
書きにくいノート、書きにくいペンだと、自分の思考じゃなくて、「書く」という作業自体に意識が行ってしまいますから。
私が使った中で一番良かったペンは、

でした。
ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニングでも紹介された、1本100円以下のペンですが、お高い万年筆よりも、amazonで高評価の高機能ボールペンよりも、字をすらすら書くという機能に関しては抜群です。 

このプログラムは書き物をすることが基本になりますが、ノートは百均で可愛いのを適当に探してくる(勿論その過程も楽しむ)、そして、走り書きではないペンはお気に入りの万年筆とインクで遊ぶようにしていると、ちょっとした書き物も娯楽として面白く続けられます。