下園壮太「自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術」:数値化が分かり易い
下園壮太「自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術」を読みました。
タイトルからは、疲れを取る具体的なテクニックを多く集めた本かと思えますが、内容は、少し違います。
心の疲れがどうして起きるのか、どのようにして蓄積していくのかの仕組みから説明がされています。
疲労を数値化し、それに対してどのような行動をとるべきかという方針部分に重きが置かれていました。
小手先の技ではなく、仕組みを理解した上でどのように対応すればいいのか分かる、大変興味深い本でした。
理路整然とした口調で読み易く、経験に基づいた説得力のある内容です。
重要な部分には図示が入るため、分かり易いです。
大変まとまった文章なので、個人的には、もう少し図解を入れられる、そうすれば読み返し時に要点を思い出すのが容易になって良いと感じました。
全体の構成
- 1章 ムリしすぎて潰れないために
- 2章 感情の無駄遣いを防ぐ
- 3章 ムラのある人から脱却する
特に、「1章 ムリしすぎて潰れないために」だけでも、一読の価値はあるでしょう。
これまではっきりと考えたことのなかった、無理が重なって疲労が蓄積していく理由が、理路整然と説明され、目から鱗の落ちる気分になります。
ここではまず、無理が重なっていく段階や、無理を重ねる人の共通点が説明されています。
無理は3段階で進行する
- 第一段階=普通の過労段階
- 第二段階=別人化の始まり
- 第3段階= 別人化
それぞれの段階でどのような症状が起きるか、それに対して本人と注周囲はどう対応すれば良いのかをまとめてあります。
疲労が溜まると、思考や感性が通常と違ってくる「別人化」が起きるという説明は、言葉のチョイスと相まって、イメージし易いです。
また、無理を溜めやすい人の特徴として挙げられていた、「子供の心の強さ」しかないという指摘は、是非覚えておきたい内容です。
「子供の心の強さ」と「大人の心の強さ」
子供の心の強さとは、「我慢する」「諦めない」「全部やる」「一人でやる」「完全にやる」という姿勢・方針のことです。
説明が非常に分かり易かったので、少し長いですが、引用します。
子供の心の強さは、子供時代、実際に成功に結びつきやすかった。というのも、子供時代は毎年自分自身の体力・知力が成長する。我慢して努力していれば、だんだんできてくるようになる。
また、学校などで与えられる課題も、努力や忍耐で克服できるものが多かった。この結果、私たちは、この子供の心の強さを強く「学習」してきているのだ。
一方、大人になると少し違うタイプの心の強さが必要になる。「大人の心の強さ」だ。(中略)今の「自分」を愛し、認め、上手に使いこなす能力が必要になる。
(中略)特に、社会や人のために(人に合わせて)活動することと、自分のために活動することのバランスを取るのは難しく、プレッシャーのかかる作業だ。
これらの作業をうまくこなせるのが「大人の心の強さ」。
大人の社会でムリを溜めやすいのは、子供の心の強さが強すぎる人たちだ。
1章では、この他、無理を自覚しにくい4つの理由などがあり、これも分かり易いです。
この本最大の特長:具体的な数値を使った疲労コントロール法
以降の章でも、実生活での無理・無駄はある程度避けられないものとして、ではどのように対応しておくべきかを、具体的な数値として表してくれています。
- ムリの進行の3段階(1倍~3倍モード)
- ライフイベントのストレス例としてストレスをポイント換算する方法
- 意識と無意識の満足のバランスをとる、7~3バランス目標設定法
など、数値化して具体例が載っているのがとても良いです。
単に精神論に留まらず、大変実用的です。
疲労管理、セルフコントロールが上手くないと思う人に、是非お勧めしたいです。
関連図書
「2章 感情の無駄遣いを防ぐ」では、
自分の力を最大限に発揮する! 脳のトリセツ (DO BOOKS)
- 作者: 菅原洋平
- 出版社/メーカー: 同文舘出版
- 発売日: 2014/09/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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でも説明されていたような、感情の無駄な上下がどれほど日常のパフォーマンスを落とすかの説明と、その対応が書かれています。
この2冊を併せて読むと、大変効果的だと思います。